2012年2月5日日曜日

救出1) 前日




2012年1月12日に、デリーにある売春宿から10名の少女・女性を救出した。
その時の話をしたい。その前に、その前日のこと。

僕は引ったくりにあった。


(写真は、とある警察署)


インドルピーをあまり持っていなかったため、銀行へ両替に行った。オフィスから徒歩10分程度のところだ。そして、バッグにお金をいれ、リキシャワラ-(人力車のタクシーのようなもの)に乗ってオフィスへ戻った。1時過ぎのことだ。

バッグにお金を入れ、それを肩にかけ、リキシャに乗っていること、そして、団地のようになっていて、出入り口にガードマンがいることから油断してしまった。救出計画について考え事をしていた。突然、二人乗りでバイクがあらわれ、僕のバッグを掴み、僕の体ごと引っ張り、リキシャから引きずりおろし、バッグを強奪された。

これまで、途上国への出張・旅の中で騙されたりしたことはあったが、こういうことは初めてだった。あえて言えば、ムンバイの売春宿に行った時に、ベテラン セックスワーカーに恐喝にあったぐらいだ。その時はむしろ危険地に行くという意識があったので、そういう予想もしており、冷静に対処できた。むしろ帰りの交通費のための費用を交渉して返してもらった。今回は、予想していなかったことだけに動揺した。両替直後なので、もっていた金額も大きかった。


特に動揺したのは、実はこの日(11日)の夜に救出する計画だったことだ。この計画に影響を与えることを僕はもっとも恐れた。このことのために、少女たちを救出するのが一日遅れることだけは避けたい。そう思った。


そうして、パニックになりつつも、スタッフに「救出は今日実施してください」と伝えた。彼らはベテランとはいえ、直前にこういうことが起こると、救出に集中できないのではないかとも思った。その時点で迷惑だった。反省するしかなかった。僕が出来ることは落ち着いていることを装いつつ、警察など各種手続きをすることだけだった。

警察署にスタッフと盗難届を出すために行くと、そこに一人の少女がいた。


インドの警察は男性警察官が多く、したがって署内に少女がいると目をひく。僕は僕の事情があったので、その時は素通りした。その後、スタッフが警察と話していてわかったこと。それは、彼女は、遠く離れた村で、父親にレイプされ逃げ出したということ。母親はすでに亡くなっていた。地元の警察は信用出来ないので、デリーまで数百キロの道のりを超えて、この警察署に逃げ込んでいたのだ。


スタッフが警察に代わり話を聞くと、少女は泣き崩れた。さすがはNGOスタッフ。警察よりも熟練しており、話をじっくり聞いていた。そして、少女を保護する施設を持つ別の政府機関に連絡を取り、手続きをとった。


一歩間違えれば彼女はこの大都会ニューデリーで、さらに騙されて売春宿に売られてしまうかもしれなかった。そういうケースはたくさんあるのだ。おそらく、彼女は、警察への道を尋ねただろう。その人がもし悪い人であれば、「警察まで連れていってあげるよ」といって、売春宿に連れていってしまうかもしれない。

僕は、たくさんのお金を取られた。でもそれは小さなことだ。父親にレイプされ、もしかしたら人身売買にあい奴隷にさせられていたかもしれない、この小さな少女に比べたら、自分は間違いなく幸せな環境にいる。こうした少女がこれ以上増えないために、くよくよしている場合ではない、頑張らねば、と思った。

今日できたこと : 僕が盗難にあったおかげで、警察署に同行したスタッフが、少女のケアをできたこと。

(ちなみに、救出計画を共同で実行する警察側の事情から、摘発は翌日に延期された。)

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