2006年9月14日木曜日

経営ノート カンボジアの観光土産はタイでつくられている

【カンボジアには仕事がない?】 カンボジアにおいては、仕事がない、といわれる。大学を卒業したとしても、バ イタク(バイクタクシー)の運転手をせざるを得ない・・・ということである。
ところが、カンボジアおいて、失業率は5%程度で(世銀かどこかのデータで確 認する必要がある)、よく言われていることとデータが異なっている。これはな ぜだろうか?
また、そもそも、仕事がないのはなぜなのかだろうか?


【失業者を農業が吸収している】 まず失業率が5%というのはなぜだろうか? この解はカンボジアの産業構造にある。カンボジアにおいては産業の中心は農業 である。国民の多くは農業に従事している。この農業は生産性が他国と比べると 非常に低い。というのは、化学肥料や機械化が進んでいないからである。その結 果、カンボジアの農業は、ある種人海戦術的になるし、たとえば10人で働こうが 11人で働こうが生産高が大きく変わるわけではない。 したがって、都市で失業した人は農村に戻ればよい。
【経済開放が進み、農業部門は厳しくなる】 「まあ、農業に従事できるからよいではないか」と思うかもしれない。 しかし、今後のことを考えると、厳しいのである。というのは、カンボジアは 1999年にASEANに、2003年にWTOに加盟しており、農産物も他国の商品と の競争にさらされるからだ。
「今後5-10年を考えると農業の支援だけをしていてはまずいと思っている」
これは農業支援を得意としているNGOスタッフのコメントだ。低い生産性のカ ンボジアの農業は競争に勝つためには生産性を向上する必要がある。それは、機 械化を意味し貧しい農民は農業に携わることが難しくなっていくのだ。そして、 彼らは仕事を求めて都市へ流れる。しかし、教育を十分に受けておらず、そして 仕事がないゆえに、仕事を得ることは難しいだろう。
【カンボジアの観光土産はタイでつくられている】 先日、町で果物を買っていると、カンボジア人スタッフが言った。「これはタイ から輸入している」。僕は驚いた。また、観光客が群がるマーケットの商品、彼 らはカンボジアに訪れた思い出として購入するのであろう。しかし残念ながら、 それはカンボジア人が売っているだけでカンボジアが作っていない。タイやベト ナムから輸入しているのである。タイ・ベトナムは、カンボジアが内戦により国 土と人心を荒廃させている間に、せっせと発展してきた。そういう国で大量に生 産された商品がカンボジアに流れ込んでいる。逆に言えば、そういう商品をカン ボジアでは作る能力が低いのだ。
【仕事がない本当の理由】 そう、これがカンボジアに仕事がない理由なのだ。カンボジアには市場はある。 しかし、それは外国製の商品が並んでいるのだ。仕事がない、というのは正確な 表現ではない。仕事をする能力が無いのだ。もっといえば組織的に仕事をする能 力がないのだ。
例えば、カンボジアにおいても大きな建物が建つ機会が増えてきた。特に観光業 関連のホテルなどはどんどんたっている。そこで働いているのかカンボジア人だ が、設計や監督をしているのはタイ人だそうだ。単純作業ができるが、付加価値 の高い仕事をすることはできない、ということを意味しているのであろう。
【内戦によりカンボジアには組織や知識が非常に少ない】 こういう状況になっている背景には、やはり内戦の影響が強い。内戦において、 農村も都市も組織が破壊されたし、知識人はほぼすべて殺された。教師もいなく なった。カンボジアの復興・発展を担っている人たちの一部は、難民となってカ ナダなど海外に逃げた人やそこで生まれ教育を海外で受けた人たちだという。実 際、カンボジア最大級の企業である「アルチザン」のトップはカナダ出身のカン ボジア人なのである。
【カンボジアに希望はあるのか】 こうしたカンボジアにおいて希望は無いのだろうか。多くの人が言うように、カ ンボジアの農民は保守的で教育をうけていないから考える力が弱いから、カンボ ジアは仕事を作り出す能力をもちえないのだろうか?
いや、可能性は十分有る、と私は考えている。例えば、カンボジアは縫製工場が 発展しており30万人の女性が雇用されている。彼らは農村出身者が多くである。 途上国において工場、というと非常に劣悪な環境が予想されるが、そこまででは ない。というのは、アメリカに輸出するときカンボジアは特恵待遇を受けている のだが、そのためには、「労働法をきちんと守ること」がリクエストされている からだ。この工場からは日本のGAPやユニクロにも輸出されている!
これらの工場があるということはカンボジアでも十分大きな企業を持ち、製品を 生産することができることを示している。足りないのはマネジメントクラスであ ったり投資なのである。農民を組織化し働いてもらいその商品をカンボジアで売 る、タイで売る、ベトナムで売る。これは確実にできる。


【Think Big, Start Small】 そのときに大事なのはThink Big, Start Smallではないかと考えている。しばし ばNGOは「草の根」視点を大事にしすぎるあまり、小さく小さくやってしまう。 それはもちろん大事なことだ。しかし突き抜けてイノベーションを起こし問題解 決をするためには大きく考えること、これも大事だろうと思っている。「理髪 師」のトレーニング、「バイク修理」のトレーニング、これらも大事だ。村で職 を得るチャンスもある。しかし、そうではなく、大きく企業化を目指す、そうい うったトレーニングがあってもよいのではないか、と考える。
現場にいると、どんどん「現実的」思考になってくる。「大学生でも就職できな い・・・」という現状に対して、「仕事がないから・・・」と思考停止してしま ったはまずい。なぜ仕事が無いのか、仕事ができるようにするためにはどうすれ ばよいのか、を必死に考えなければならない。現場にいて現実を考えることは大 事、しかし目線は常に上に持ち、「カンボジアのお土産はカンボジア人が作って いる」状況を目指したい!

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