スレイパウ(仮名)の家は、金持ちだ。
家は金持ちだけれども、スレイパウは貧乏だ。
いつも汚い服を着ている。
スレイパウは両親がおらず、遠い親戚の家に、兄弟とともに
預けられている。その親戚(義理の家族)はスレイパウをいじめている。
一度、スレイパウがファクトリーを辞めたことがあった。
表面的な理由は「農作業で忙しいから」であったが、
本当の理由は、義理の姉が、「ファクトリーに通って
技術を身につけるなんて、ねたましいから」だった。
最近の製品の評価表をみていると、スレイパウは
他の女性に比べて成績がよくない。つまり、「へたくそ」なのだ。
訓練教師のペンに、「うまくサポートしてあげてな」と言うと、
ペンは「うーん、アドヴァイスすると、哀しそうにして泣いてしまう
こともあるの」と困って言った。
実際へたくそなこともあるけれど、それ以上に、自分に対して
自信を持てないからだろうとおもった。
家では、屈辱的なことを家族から言われている。彼女にとっては、
小さい村の中で生きていて、家族から言われることがすべてなのだ。
一日一日をなんとか生き延びている。ファクトリーから家に帰ると、
義理の家族のために料理を作る。それはとてもよい料理だ。
スレイパウは、それを食べず、もっと貧相な料理を食べる。
そういう環境で、誰が自分に誇りをもてるだろうか。
だいいち、彼女はまだ17歳(?)なのだ。
昨日、スタッフと訓練教師で定例ミーティングをした。
その中で、新しいこととして、「今週のスター」というのを
選ぶことにしたんだけど、なんとその第一回のスターに
スレイパウが指名された。
今週のスターというのは、コースごとに今週がんばった人、
みんなの手本になるような人をひとりずつ選んで表彰しようと
いうもの。
スレイパウは、とても技術がへたくそ。でも、家庭環境も大変、
時には手に暴力の跡を抱えながらも、朝早くきて、ファクトリーの
掃除をしている。そういう頑張り屋なところが評価された。
家族に無理やりファクトリーを辞めさせられたときの
スレイパウの言葉が今でも忘れられない。
ぼくは聞いた。
「家の仕事や農業もやりながらだと、本当に大変だ。
でも、ファクトリーに通ってがんばるか?」
スレイパウはにこっと笑って言った。
「私は、私の未来のために、がんばりたい」
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